第14回 心理教育相談センター講演会「DV対策のこれまでとこれから-被害者・加害者の心理と支援-」

第14回 心理教育相談センター講演会「DV対策のこれまでとこれから-被害者・加害者の心理と支援-」

日 時 平成26年6月7日(土) 10:00~16:00
場 所 長崎純心大学(長崎市三ツ山町235) 会場案内新しいウィンドウで開く
S205教室
プログラム
9:30 受付開始
10:00~10:10 開会 主催者挨拶/講師紹介
10:10~11:50 基調講演
「家族の暴力について考える~カウンセリングの経験から」
講師 信田 さよ子 氏
(原宿カウンセリングセンター 所長)
11:50~13:00 昼休み
13:00~15:50 シンポジウム
シンポジスト:
中田 慶子 氏(NPO法人 DV防止ながさき 理事長)
「DV被害を受けた母子の支援に必要なこと」
原 健一 氏(佐賀県DV総合対策センター 所長)
「被害者支援と加害者プログラムの可能性について」
田村 毅 氏(田村毅研究室 代表)
「男性性と暴力――なぜ男性は暴力を使うのか」
指定討論者: 信田 さよ子 氏
15:50~16:00 閉会挨拶
後 援 長崎県、長崎県教育委員会、長崎市教育委員会、アマランス、
長崎県臨床心理士会

講演会報告

 第14回長崎純心大学心理教育相談センター講演会は「DV対策のこれまでとこれから~被害者・加害者の心理と支援」というテーマで開催され、多分野から多くの方の参加をいただきました。

 基調講演では、原宿カウンセリングセンター所長の信田さよ子先生から、センター開設以来支援を継続されたDV被害者の実態や支援の実際、問題点についてお話をお聞きしました。先生のセンターではさまざまな主訴がある中、DV被害者支援の場合は、被害者がDVと確信が持てない段階から、例えばこっそりと引っ越し準備をする段階、裁判中、裁判が終わってから数年後に虐待被害者として育った子どもの問題、被害者母子の心理教育プログラムなど、長期にわたってあらゆる支援が必要という事です。その中で、アルコール依存症との関わりから、家庭内暴力という統一的視点を持って虐待やAC(アダルトチルドレン)も含めてとらえるようになった事や共依存論や近代家族論の持つ問題性など、切れ味よく語られ、最も尊重すべきは基本的な個人の権利であり、医療モデルでなく司法モデルで現実の暴力を終息させることを目標とすると述べられたのが印象的でした。さらにカナダで学ばれた加害者更生プログラムをもとに立ちあげられたRRP (Respectful Relationships Program)研究会にける加害者プログラムのお話もあり、終始引きつけられる内容でした。

 午後からはシンポジウムが行われ、まずNPO法人DV防止長崎の中田慶子先生から活動の報告がありました。DV被害は精神、肉体、物質、社会面にわたり、またDV神話が女性を長く苦しめている、なぜ被害者がこれほど多くのリスクを負わされねばならないのかと話され、強い共感を覚えました。さらに暴力経験が被害者の生活に及ぼす影響と支援、例えば「手続き同行」など心理的・ケースワーカー的支援の両方が必要だというような具体例を数多く挙げられ、また子どもの心身への影響や母子並行プログラムの実際など、現実に即した支援体験の積み重ねの中から得られた留意点も話され、しっかりと押さえたい内容だと感じました。

 つぎに佐賀県DV総合対策センターの原健一先生からは、被害者支援の一環としての加害者へのアプローチの意義、加害者プログラムへの参加動機、更生が難しい加害者、急性期の加害者面接の効果とリスク、参加が続かない加害者に感じる徒労感などが話された後、これからの課題として、面会交流とよい父親になるためのプログラム、デートDV加害者へのアプローチなどについて提議されました。DVの問題と取り組むにあたっては加害者へのアプローチも、難しいながら視野に入れていかなければならないとの認識を新たにしました。

 最後に田村毅研究室代表の田村毅先生から「男性性と暴力-なぜ男性は暴力を使うのか」という題で男性と暴力の深層についてお話がありました。先生は精神科医として家族療法をなさる中でDVと関わってこられた経験から、DVは、男性達が強さや攻撃性をもって男性性のアイデンティティ形成をなしている一方で、光に対する影のように悲しみや弱さも持ち、それらに鎧を着るように隠しているところからくるものであるという視点を基本として述べられました。カウンセリングや支援としては、鎧の下の影の部分を安全に受け止める他者の存在と、自他がそれに気づき向きあう事が重要であるという事でした。DVの起因論は被害者支援ではあまり扱わないと言う事ですが、加害者の理解は被害者対策の今後に関わるものとして重要であると思われます。

 これらの話を受けて信田先生がいくつかの質問をされ、母子並行プログラムやDV問題のカウンセリングにおける支援者とクライエントの性差の組み合わせによって違いがある事、加害者プログラム継続の難しさと制度化や連携・加害者臨床の提案、欧米の研究と日本文化の土壌の差異の問題など多岐にわたって活発な議論がありました。会場からも多くの質問が出され、最後に大野センター長から、これからの長崎のDV対策の深化が期待される旨のお話があり、講演会は終了しました。

 今回講演会に参加し、DVや虐待、依存症その他、家族の抱える問題は切り離せないものであるという点、また多く支援のニーズと問題点があることに改めて気づき、今後の心理士としての活動につなげる努力をしたいと感じています。各現場でご活躍の先生方に貴重なお話を聞かせていただいたことに心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

(長崎純心大学心理教育相談センター委託相談員 山口昌子)

心理教育相談センター