2023.12.01大学からのお知らせ

イスラエル閣僚の核使用発言に抗議し、イスラエルのガザ地区への攻撃の即時停止を求める四大学声明

イスラエル閣僚によって「核兵器使用が選択肢の一つ」との発言がありました。被爆地長崎に在り「長崎を最後の核兵器による被爆地に」という強い想いの中で生きるものとして、このような発言を戦時中内閣の閣僚が弄ぶということに強い抗議の念を表明します。このような発言や考え方に対し、また即時停戦への強い願いをもって、被爆地長崎にある四学校法人は合同で遺憾の声明を発します。

被爆地長崎に在る、私たち四大学の母体となるそれぞれの学校法人では、設置する全ての学校及び幼稚園で核兵器が使用されることがない世界を目指し、日本国や世界各国に向け『平和』な世界の実現を訴え、園児・生徒・学生・教職員とともに祈り続けてきました。

1945年8月9日11時2分。長崎への原子爆弾投下は、紛れもなく戦闘要員ではない一般市民、特に多くの子どもたちを犠牲にすることを厭(いと)わない行為でした。また、その日から80年近くが経った今なお苦しみ続けている人がいるということも決して忘れてはなりません。現在、被爆者の高齢化に伴い核兵器の恐ろしさを人類が忘れないために、原子爆弾による被害の実相をどの様に後世に伝えていくかを模索し続けております。

2023年10月7日。ハマスが突如イスラエルに対して大規模な攻撃を行いました。これまでの歴史的な経緯、近年の中東情勢を踏まえたとしても『平和』な世界を望む私たちとしては悲しみに堪えません。また、その後のイスラエルによるガザ地区への攻撃は、人が人を恨み合うという感情の連鎖の恐ろしさとともに、「真の『平和』とは何か。」という大きな問いを改めて私たちに突きつけたように感じます。そのような中、核兵器の保有を公にはせず、「核兵器の不拡散に関する条約(NPT)」に非加盟であるイスラエルの閣僚が「核兵器使用が選択肢の一つ」と公に発言しています。また、イスラエルは今なおガザ地区への攻撃を完全に止めることなく、そこで暮らす人々が人として当たり前の生活を送ることが出来ていないという状況を作り出しています。これらは到底赦されるべきことではありません。そして明らかに武力の行使および武力による威嚇を禁じた国連憲章第2条4項および関連する国際人道法の諸規定にも悖(もと)るものだと言わなくてはなりません。

ガザ地区で生活されていた方、また依然として人質となっている方、そして何よりも自分の正義しか見えない大人の犠牲となる多くの子どもたちとその未来のために、直ちに完全に停戦し、兵器ではなく話し合いによって紛争を解決することを心から強く願います。かつてローマ教皇パウロⅥ世は、核兵器による平和は「恐怖を平和という名で隠そうとするもの」と断じ、また2019年に被爆地長崎を訪問したローマ教皇フランシスコは、核兵器によって得られる安全保障は「偽りの安全」であると繰り返し指摘しています。私たちは武力によって得られる「平和」が、いかに虚しいものであるかをすべての人に訴えます。

被爆地長崎に在るものとして、「長崎を最後の核兵器による被爆地に」という強い想いは揺るぎません。人類は2度とあの悲惨な出来事を経験すべきではないのです。どうか全ての人に真の『平和』がありますように。

2023年11月29日

活水女子大学 学長 広瀬 訓
長崎外国語大学 学長 姫野 順一
長崎純心大学 学長 片岡 瑠美子
鎮西学院大学 学長 姜 尚中

学長メッセージ

この度、私たち、キリスト教精神に基づく教育を行っている県内4大学は、イスラエル閣僚の「核兵器使用が選択肢の一つ」との発言に抗議し、この共同声明をもって、直ちに完全な停戦を求めました。この発言に、原爆の悲惨さと人間の想像力を超える被害の甚大さを実体験として知り、今なお心身の苦しみを抱える被爆地長崎の市民は、おそらくどの県よりも反応したのではないかと思います。4大学が共同で制作したこの声明を世界に発信出来ましたことは、被爆地長崎にある大学として大きな意義を持っています。

純心女子学園は、原爆によって214名の純女学徒隊の生徒と引率教員、校舎を失いました。学園を閉じると決意した江角ヤス校長でしたが、学校、親兄弟を思い、学校で学んだ祈りと聖歌を歌いながら、亡くなっていったひとりひとりの最期の様子を知り、学園の教育は間違っていなかったと励まされ、この子どもたちが喜んでくれるなら、との思いで学園の再興に全力を注ぎました。

長崎純心大学のモットー「知恵のみちを歩み 人と世界に奉仕する」の原点はここにあります。「知恵」と「奉仕」によって築かれる平和の実現を目指しています。破壊された街で途方に暮れて佇む高齢者、現状を理解できない不安の中にいる子どもたちのまなざし、胸を締め付けられるこの現状を終わらせなければなりません。

教会では12月3日から、Adventus(待降節)、救い主イエス・キリストの降誕を待つ期間が始まります。生まれる幼子は「平和の君」と呼ばれます。この大事な時期に、この声明を通して、世界の人たちが心を動かされ、完全な停戦が実現して、「平和の君」を迎えることが出来るように祈りましょう。教皇ヨハネ・パウロ2世は広島を訪れた際、「戦争は人間のしわざです。」と訴え、平和を希求されました。世界の心ある人々が「救い主が来られた!」と歓喜し、人々が安心して暮らせる安全な世界に戻るよう、私たちは何を為すべきか、何が出来るかを考えていきたいものです。

長崎純心大学 学長 片岡 瑠美子